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建設現場での事故(建設業における労働災害)

建設業(土木工事業、建築工事業など)での労働災害の発生状況

建設現場では、

 ・重機・建設機械との接触や巻き込まれ

 ・高所での作業における墜落・転落

 ・大きく重い建築資材の落下や崩壊

などによる事故が発生し、それらの事故では重篤な災害が発生することが多くあります。

過去の労働災害発生状況を見ても、建設業は労働災害発生数が多い業種であり、また、死亡事故件数に関しては全業種の中で最も多い業種となっています。

建設現場での事故と労災申請、損害賠償請求

建設現場での労働災害では、重篤な怪我が発生することがあり、被害に遭われた方、そのご家族には、長期間の治療のための治療費や、長期間の休業に伴う生活費不足など、様々な負担が生じます。

そのような金銭的な負担に関しては、労災保険から療養補償給付、休業補償給付などを受けられます。

労災保険は、被害に遭われた方に過失(落度やミス)がない場合はもちろんのこと、過失がある場合でも保険給付を受けることができます。

そのため、まずは「労災保険の申請」に向けて進んでいただくことになります。

ただ、労災保険からの給付には慰謝料がなく、休業補償給付も100%ではありません。また、仮に後遺障害が残った場合、本来なら、将来働いて得ることができたであろう利益(逸失利益)の補償も十分ではありません。

そのため、労災保険の申請だけでなく、十分な補償を受けるために、他の従業員や会社に対する損害賠償請求を検討することになります。

ご遺族の方も、相続人として損害賠償請求ができますし、また、ご遺族固有の慰謝料を請求できることもあります。

損害賠償請求ができる場合

損害賠償請求ができるのは、

 ①労働災害に関して加害者がいる場合、

 ②会社に安全配慮義務違反が認められる場合

となります。

①の加害者がいる場合は、加害者本人だけでなく、会社に対しても使用者責任(民法715条)を追求し、損害賠償請求ができます。

②の会社に安全配慮義務が認められる場合は、加害者がいない事故(単独事故)でも、会社に損害賠償請求ができます。

では、②の「会社に安全配慮義務が認められる場合」とはどのような場合か、これから詳しく説明いたします。

会社に安全配慮義務が認められる場合とは

自分一人で作業中に怪我をした場合は、会社に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求をすることになりますが、どのような場合に、会社に対して安全配慮義務違反が問えるのでしょうか。

安全配慮義務は、業種、作業内容、作業環境、被害者の地位や経験、当時の技術水準など様々な要素を総合的に考慮してその内容が決まります。

重機・建設機械との接触や巻き込まれ事故の場合

具体例① フォークリフトやトラクターショベル、ブルドーザーなどに衝突された。

具体例② ドラグショベル(ユンボ)のアームが急旋回し激突した。

具体例のような重機・建設機械との接触や巻き込まれ事故の場合、安全配慮義務が果たされていたかどうかは、下記のような事情の有無を考慮し、判断されます。

 ・立入禁止区域の設定、安全のために必要な指示の徹底など安全対策は不足なくなされていたか

 ・運転・操作の免許・資格を持っていない者に運転・操作をさせていなかったか

 ・機械を操作する者、周囲で従事する者への十分な安全教育がなされていたか

 ・安全確保のための監視員の配置などは十分になされていたか

転落事故の場合

具体例① 単管、枠組足場や移動式足場上で塗装作業などをしていたところ、足場から転落した。

具体例② 建物の解体工事現場で、屋上に上がって屋根材の取外しを行っていたところ屋根材を踏み抜き墜落した。

具体例のような転落事故の場合、安全配慮義務が果たされていたかどうかは、下記のような事情の有無を考慮し、判断されます。

 ・落下防止のための柵や手すり、囲い、安全ネットの設置、安全帯の使用、作業床の設置など、十分な対策が施されていたか

 ・はしごは設置されていたか

 ・通路の照明は十分か、床面はつまずきや滑り等の危険はなかったか

 ・安全対策の指示・指導、安全な作業手順の指示は十分になされていたか

 ・被害者の健康状態を把握していたか

 ・作業工程には時間的な無理はなかったか

落下物・崩落した物による事故の場合

具体例① コンクリートブロックを電動式の巻き上げ機で吊り上げていたところ、ワイヤロープからブロックが落下し、下で作業をしていた人に激突した。

具体例② ビルの解体中にコンクリート壁が倒壊し、下敷きになった。

具体例のような落下物、崩落した物による事故の場合、安全配慮義務が果たされていたかどうかは、下記のような事情の有無を考慮し、判断されます。

 ・機械の用途外使用をしていなかったか

 ・吊り荷の落下により危険が生じる恐れがある箇所への立ち入り禁止措置などの安全対策が講じられていたか

 ・十分な倒壊防止対策がなされていたか

 ・作業者に対して当該作業における安全な作業方法について十分に教育を行っていたか

 ・作業工程には時間的な無理はなかったか

以上の他にも無数の労災事故が発生しており、安全配慮義務違反の有無が問題となっています。

一般的には、①労働者の安全対策として「労働安全衛生法」と「労働安全衛生規則」が定められておりますが、その条文に違反するような状況下で事故が起きたのであれば、安全配慮義務違反を問いやすいと言えます。

また、②重大事故で労働基準監督署が災害調査を行い、その結果、法令違反があるとして是正勧告などを会社が受けた場合や、警察・検察が捜査をして会社や担当者が刑事処分を受けた場合は、高い確率で会社に対して安全配慮義務違反を問うことが可能です。

早めのご相談、ご依頼で安心を

労働災害の補償やその手続きは複雑で、一般の方が理解しづらいとお感じになる部分も少なくありません。

弁護士にご依頼いただくことで、過去の裁判例や文献を調査し、これまでの経験を踏まえて、会社側に責任があるのかどうかをより正確に判断し、会社側と対等に交渉することが可能です。

また、「弁護士に依頼するかについては未定」という方も、お早めにご相談いただくことで、弁護士はその方の具体的な事情を踏まえたアドバイスができますので、ご不安の解消や、今後の方針を立てるお役に立つことでしょう。

労働災害に遭われて、お悩みの方はぜひ一度、ご相談ください。