1 はじめに
通勤時の交通事故や労働災害などで脳に損傷を負うと、外見上は回復しているように見えても、記憶力や注意力、遂行機能、感情のコントロールなどの脳の働きに障害が残ることがあります。
これらの障害は「高次脳機能障害」と呼ばれるもので、重篤な後遺障害として、被災者の業務や日常生活はもちろんのこと、ご家族の日常生活にも大きな影響を与えることが多いのが実情です。
この記事では、高次脳機能障害の代表的な症状、後遺障害等級認定における重要な要素、労災保険で受けられる補償、そして弁護士に依頼するメリットについて解説します。
2 高次脳機能障害の代表的な症状
① 新しいことが覚えられない
② 何度も同じことを聞く
③ 集中できない・気が散りやすい
④ 作業にミスが多い
⑤ 半側空間無視
⑥ 計画性がない
⑦ 目標設定ができない
⑧ 幼稚化する
⑨ 場違いな行動・発言をする
⑩ 突然怒り出す
⑪ よどみなく話すことができない
⑫ 言葉が理解できない
⑬ 字の読み書きができない
⑭ 場所を認識できない
⑮ 家を出ると帰って来ることができない
⑯ 道具がうまく使えない
⑰ 動作がぎこちない
⑱ モノの形・色がわからない
⑲ ヒトの顔がわからない
⑳ 半側身体失認
3 後遺障害等級認定における重要な要素
高次脳機能障害は、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動力という4つの能力の喪失の程度により評価されますが、実際上、以下の要素の1つ以上に該当するか否かも重要となってきます。
① 頭部外傷後の意識障害、もしくは健忘症、軽度意識障害が存在すること
② 以下の傷病名と診断されていること
脳挫傷、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳室出血、低酸素脳症等
③ 画像(XP、CT、MRI)所見で②の傷病名が裏付けられること
4 「労災保険」の申請
他の記事で詳しく記載しているとおり、労災保険は、業務中の事故や怪我に対して適用される公的な保険制度で、労働者が一定の補償を受けられるようになっています。会社の規模や雇用形態に関係なく、正社員はもちろん、パートやアルバイトなどの非正規雇用の労働者にも適用されます。
また、会社が協力的でない場合も申請可能です。
労災保険の利用は労働者の正当な権利ですので、「会社に迷惑をかけるのではないか」とためらう必要はありません。
まずは労災保険を申請してください。
主な補償内容は以下のとおりです。
① 療養補償給付(治療費の補償)
② 休業補償給付(休業中の給与の約8割が支給)
③ 障害補償給付(後遺障害に応じた補償金)
④ 介護補償給付(介護が必要な場合の補償)
5 弁護士に依頼するメリット
(1)通院治療のサポート
通院先や治療経過について、被災者やご家族からの相談を受け、できる限り適切な通院治療となるようにサポートいたします。
(2)適正な後遺障害等級認定手続きのサポート
ア 高次脳機能障害の後遺障害等級認定においては、医師に専用の様式で、後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
こちらの作成について、専門家としての見地から適宜アドバイスをしたり、必要に応じて医師と直接面談するなどのサポートをいたします。
イ また、被災者のご家族に日常生活状況報告表を作成いただく必要がありますが、作成には相応の難しさがあると思います。
こちらの作成も、被災者のご家族からお話しを聞かせていただいた上で、作成のサポートを行い、ご家族の負担を軽減いたします。
(3)損害賠償請求の代行
労災保険からの給付は、治療費や休業中の所得の一部などを補償するものですが、精神的な苦痛に対する慰謝料や、後遺障害によって失われた将来の収入(逸失利益)の全額まではカバーされません。
これらの損害について会社から十分な賠償を受けるためには、加害者または会社に対して損害賠償請求をする必要があります。
ご依頼いただいた場合は、証拠収集から、賠償額の算定、加害者・会社との交渉や裁判まで、専門家としてサポートいたします。
(4)ご本人・ご家族の精神的負担の軽減
お怪我の治療やリハビリに専念されている間、加害者や会社等とのやり取りや法的手続きの一切を弁護士に任せることができます。
「専門家が対応してくれている」という安心感は、精神的な負担を大きく和らげます。
6 さいごに
事故直後は「命が助かっただけでも良かった」と思われるかもしれませんが、上述のような症状で、業務や日常生活に多大な支障が生じることが多いですし、ご家族の心身にも多大な負担となることが多くあります。
高次脳機能障害は初期の通院治療の適切さも重要となりますので、できる限り早い時期に弁護士にご相談いただき、サポートを得た上で、適正な補償を受けていただきたいと考えております。
初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。