労働災害とは

労働災害とは、労働者が仕事に関連して怪我や病気を負ったり、死亡したりする事故や健康被害のことで、「業務災害」と「通勤災害」があります。
労働者が働く過程で発生する様々な危険要因によって引き起こされる可能性があります。

労働災害の原因は多岐にわたります。
例えば、危険な作業環境や施設、作業機械や装置の不適切な使用、適切な保護具の欠如、労働時間や休憩時間の適切な管理の不備、作業手順のミス、労働者の無理な労働負荷や過労、化学物質や有害物質の暴露などが挙げられます。

労働災害の結果として、労働者は怪我をしたり、病気にかかったり、最悪の場合は死亡することがあります。
これにより、労働者やその家族に深刻な身体的・精神的な苦痛が生じ、社会的・経済的な影響も及ぶ場合があります。

業務災害の場合

業務災害とは、業務から生じた災害、すなわち労働者が労働契約に基づいて会社の支配下において労働を提供する過程で、業務に起因して発生した災害をいいます。

業務災害であると認められるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」の要件を満たす必要があります。

業務遂行性とは、労働者が労働契約に基づいて会社の支配下にある状態をいいます。

そのため、労働者が業務に従事している最中はもちろんのこと、業務に付随する行為や業務と一連の関係を持つ行為も原則として業務遂行性が認められますし、業務に従事していない休憩時間中などでも、会社の支配下にある場合には業務遂行性があると判断されることがあります。

例えば、以下の場合は業務遂行性があると判断される可能性が高いといえます。

　①トイレのために席を離れている際の事故

　②業務前の更衣室内での事故

　③業務後の後片付け中の事故

　④社内で休憩中に、会社に備え付けられている給湯器で火傷をしたという事故

　⑤出張先のホテル内で、自室から浴室への移動中の転倒等の事故

他方で、具体的な目的や状況にもよりますが、以下の場合は業務遂行性が否定される可能性が高いです。

　①休憩中に、会社の外にあるレストランで食事をしている際の事故

　②出張中の空き時間を利用して観光している際の事故

　③取引先との接待ゴルフの際の事故

　④会社メンバーでの宴会、懇親会の際の事故

業務起因性とは、「業務が原因」となって怪我を負ったこと、すなわち、業務と怪我や病気などとの間の因果関係のことを指します。

例えば、業務中に同僚から受けた暴行による事故で、単なる「喧嘩」とみられるような場合は業務起因性が否定される可能性が高いです。

通勤事故とは、労働者の通勤によって発生した傷病等をいい、「通勤」の際に負った怪我や病気に対して認定される労働事故です。

「通勤」に該当するケースとしては、以下の３つがあります。

　①住居と就業場所との往復

　②就業場所から他の就業場所への移動

　③単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動

そして、これらの移動は合理的な経路および方法により行う必要があります。

したがって、移動経路からの「逸脱」や「中断」があった場合には、原則として「通勤」とは認められません。

もっとも、この逸脱・中断が、日常生活を行ううえで必要な行為（日用品の購入・選挙権の行使など）をやむを得ない事由のために最小限度で行うものである場合には、これらの逸脱・中断後の移動は「通勤」にあたるとされています。

以下の場合は、「通勤」にあたらないと判断される可能性が高いので、ご注意ください。

　①業務後、上司や同僚と居酒屋で２時間飲んだ帰り道に怪我をした場合

　②通勤中に体調が悪くなり、勤務先へ欠勤の連絡をして家に帰る途中で怪我をした場合

　③通勤途中にスーパーに寄って買い物をした後、スーパーから通勤経路に戻るまでの道のりで怪我をした場合